<東京文化会館委嘱作品であり、佐川吉男音楽賞を受賞した青いサカナ団の“最高傑作”が待望の再演!>
神田慶一(国立オペラ・カンパニー 青いサカナ団芸術監督)
桜の花が満開の季節、ごく日常的な週末の夕方、都内某所のファミリーレストランに2人組の銀行強盗が逃げ込んで来る。彼らは客達を人質に立てこもるが、俗に言う「ストックホルム症候群」の如く、犯人と人質は奇妙な連帯意識の中で現代社会について語り合い始める。犯人の1人ジローは、サクラと名乗る美しい人質の女性から意外な提案をされる。それは彼をここから逃がし、しかも彼の夢を叶えてあげるというものだった。春の夜の夕闇が迫り、ジローは世にも不思議な夢を見ることとなる。彼が生きるために選ぶのは「永遠の夢」か、それとも「苦い現実」か?
これまで8作もの、それぞれに斬新で刺激的な新作オペラを発表してきた青いサカナ団芸術監督・神田慶一が03年に東京文化会館委嘱作品として発表したこの作品は、初演時から高い評価を受け、同年の佐川吉男音楽賞を受賞した。極めて演劇性の濃い群像劇であり、現代社会の風刺でありながら、時代を越えて日本の美を追求した意欲作である。21世紀のスタンダード・オペラとして今後語り継がれるであろうこの“現代の寓話”がいかに皆様の心に響くか、ぜひ皆様自身で体験して頂きたい。